昭和60年「クリアデント」ブランドで「三角ようじ」と「糸つきようじ」を全国の薬局で発売した。
歯間にピッタリ 三角ようじデンタルピック
料理用のようじ カクテルピック
各代理店の営業の方が薬局を訪問して前日の受注品を納品して、新規の注文をとって回る営業活動に同行して、商品説明をして、商品の扱いをお願いして全国を回った。 中には「俺につまようじを売らすのか!」と怒られる先生が幾人もいた。 薬局の先生は薬学部を出られた国家資格を持たれた方で、周りの小売店とは違うと いう自負を持っておられた。元々つまようじは家庭用品の荒物売り場で売られる「ようじ、箸、たわし、包丁、まな板」の類である。そういう説明の要らないものを売らせるのかという意味である。「そこで先生の言っておられるのは丸いようじです。欧米では歯に使われるようじは三角形でデンタルピックを呼ばれ別物です。欧米では薬局で売られる商品です」と説明して回った。 三角ようじそのものも初めてなら、歯を守る道具であるという発想もないのだから無理もない 話である。 各方面の営業の方と回るなかで、同じ説明を店毎にするのだから、営業の方がまず理解してくれて、私が話す前に先に説明してくれるようになってきた。 なるほど、同行販売とは営業の方に理解してもらえるのかと感心する。本人も実際に使ってみて、その良さに納得する。時間がかかって、地味だがこういうことしか広く知ってもらう方法はないのだと納得する。
昭和62年中小企業展に来られた淀屋橋の歯科医院の中村喜一先生が展示していた三角ようじをご覧になって「これはスウェデン製ですか?フィンランド製ですか?」と尋ねられたので日本で作っていますと返事すると驚かれ、「これが出来るのなら歯間ブラシは出来ませんか?簡便なものがなくて困っています」とのこと、この「簡便な」という言葉と先生の熱心さに思わず考えますと返答した。 歯間ブラシは15センチ位のハンドルの先端に歯間ブラシのワイヤーを差し込んで折り曲げて、固定する輸入品しかなかったので、短く使いやすい商品を要求された。 私の中学時代の親友の灰原良彦が近くで服飾雑貨を作っていて、プラスチックに詳しいので歯間ブラシの製造について話をすると、一般的には射出成型で作るのは無難であるが、それなら後発のメーカーが出てきて同じことをするだろう。その時には価格競争になるのが目に見えている。 貴方の会社には、どんな機械も作る凄い大西一夫工場長がいるのだから、全く別の作り方がよいと押し出しパイプメーカーを紹介するから、今から行こうとその場で私を車に乗せて、そのメーカーに向かった。事情を話すと程よいパイプを作ってくれた。 工場長はパイプに歯間ブラシを挿して、その下をラジオペンチで挟んで歯間ブラシを固定した。原形ができたので次は見た目を美しくしてそれらしくなったので、中村歯科医に見てもらうと、その出来栄えとその早さに感心され、商品化して欲しいと頼まれた。