この昭和23年に白樺を薄く剥いた板から丸いヒゴ状の軸を刃物で切削する方法が河内長 野の土井金三によって初めて考案された。この工法は丸い白樺製の楊枝を作りたかった業 者の長年の夢であり、これにより製品が飛躍的に良くなり、今日の基礎を成すのである。 同時に丸い楊枝が輸出競争力を持つ大きな理由の一つである。
昭和24年に広栄社は飛騨の高山の丸正産業と提携し、生産を一部委託した。最初は原木 を高山より運んでいたのが、余りにも輸送コストにロスが多く掛かったためである。 そこで半分はそのまま原木を買って河内長野で製造し、残り半分は製品にして運ぶことを 考えた。この年の丸正産業からの納品書が残っているので一部を抜き出し下記に掲載する。 これから当時の製品の種類や内容・価格が判る。
昭和24年
月日 品 名 数量 単価 金額
7月16日 文化楊枝5ポンド 50梱 1,500貫 150円 225,000円
〃 同上 木箱 50コ 550円 27,500円
〃 同上 ボール箱 2,500コ 16円 40,000円
〃 同上 紙ひも、ハトロン紙、諸経費 39,000円
7月25日 文化楊枝バラ 32梱 250.4貫 150円 38,160円
〃 同上 木箱 52コ 550円 26,000円
10月12日 羽衣 74貫 250円 18,500円
〃 同上 木箱 10コ 50円 500円
〃 角妻 37貫 120円 4,400円
〃 同上 木箱 4コ 50円 200円
12月7日 羽衣 4個32.4貫 250円 8,225円
角妻 7個56,3貫 120円 5,856円
文化 1個 8,2貫 150円 1,230円
角妻 1個10.2貫 120円 1,224円
角妻 太い 10個44,5貫 5,340円
上記木箱代 23個 1,750円
平妻は平楊枝のことで米国から輸入機械を購入して、Flat toothpickを作り、
平楊枝とか舶来品由来なので文化楊枝と呼んだ。
角妻は丸い楊枝が出来るまで角妻楊枝と称し、四角い棒状の楊枝を作っていた。
羽衣は上記の四角い楊枝の一面を熱で焦がして黒文字の代用品としていたもの。