平成16年 東京の中小企業展に出展していると東京の㈱IDMの宥免社長がお見えになり、大学がメラミンフォームで歯をみがくという特許をとったので商品化の依頼がきているが応じてもらえないかと相談を受けた。馴染みのない物質なので研究しますので時間を下さいと色々当たってみることにした。メラミンをホルマリンで重合して食パンのように膨らませたもので、台所の清掃具に使われていて重宝がられているまでは分かったが口の中に使っていいものかどうかが問題であった。圧縮するとホルマリンが飛散して安全との知見を元に実際に試してみると歯の着色汚れがよく落ちる。市場調査をするとコーヒー、お茶、ワイン、タバコのヤニなどの歯の着色汚れに悩んでおられる方の多いことも判明した。水をつけて磨くだけで着色汚れをすぐに落とせる簡便性と歯を傷つけないことも確認出来た。 メラミンフォームを商品化するに当たり、歯の着色汚れを取るには、鏡をみて、つま先に道具を持って磨く。そのため親指、人差し指、中指の3本でつまみ易い形状をデザイナーとので要望した。デザイナーは試行錯誤の後に現状の形に到った。デザインが決まると次に金型である。金型が出来ると試作品ができる。その試作品を使って製品を作る機械をどうすればよいかを考える。社内の工場長の後藤幸雄がまずCADで機械図面を作成、それを基にして機械を社内で製作する。機械の躯体や簡単な部材は社内で作る。面倒な部分は外注する。必要な機器は発注する。そうして段階的に組立てていき、最後はシーケンサーと呼ばれる小型のコンピューターに動作の手順を入力する。全ての機械をこういう順序で作る。
平成18年に経済産業省の新しい施策で「新連携」という制度を同友会で知った。 これは大学か研究機関の指導の下に異業種の二社が協力して、全く新しい発想・技術 を開発すると応援するという制度である。 窓口の中小企業基盤整備機構の長崎プロジェクトマネージャーを訪問した。聞くとハードルは高そうであった。 三度目に訪問するとこの施策はB to B(Business to Business)即ち企業と企業の技術協力を想定したものだということの説明を受けた。私共の製品はB to C (Business to Consumer) 企業と消費者である。だから対象外であるが熱心に来てくれるので無碍に断れないので応対していた。このことを経済産業省に話すとB to C も考えないといけないということになったそうだ。これからは真正面に向き合いましょうと丁寧な指導を受け、大変多くのことを学ばせていただき、丸一年後、認可された。
認可されると自動的に3000万円までの補助金申請が出来る。申請されますか?と聞かれたが結構ですと返事すると不思議がられた。認可が下りてから製造機の開発をすると商品化が遅れるので認可と関係なく製造機の開発を進めていた。 公的機関で認められると新連携PR展や中小企業展などで紹介されるので、商品と共に会社の信用が高まる。名もない零細企業が作る全く新しい商品の場合は格別である。 こんないい支援策があるのに殆ど知られていないのはもったいない。